薬剤師の働き方の中でも、パート薬剤師と派遣薬剤師はライフスタイルに合わせた勤務時間や曜日を選びやすいのが特徴です。パートまたは派遣の場合は時給制で働きますが、時給の金額の決まり方や時給アップのポイントを解説します。
パート薬剤師・派遣薬剤師の平均時給は2,000円超!
薬剤師の時給は高めといわれていますが、厚生労働省の「令和3年 賃金構造基本統計調査」によると、パート薬剤師の時給は2,000円を超える水準であることがわかりました。
- 平均時給:2,412円
- 平均月収:約28万5千円
- 平均年収:約356万円
同調査によると、パート薬剤師の1日当たり所定内実労働時間数の平均は5.9時間でした。週5日勤務で月20日働いたとして、「平均時給×1日当たり所定内実労働時間数の平均」で計算した月収の目安が、約28万5千円です。「月収×12か月」で計算した場合、12か月の収入は342万円です。同調査のパート薬剤師の年間賞与その他特別給与額は約14万円でしたので、合計するとパート薬剤師の平均年収は約356万円となります。
派遣薬剤師の場合はさらに高額の傾向がみられ、時給2,000円~3,000円という求人が少なくありません。中には時給4,000円以上という求人もあります。ただし勤務地や職場の規模、派遣薬剤師のスキルによって金額は上下します。
薬剤師の平均年収(正社員)
「令和3年 賃金構造基本統計調査」によると、正社員として働く薬剤師の収入の目安は次のようになります。
- 月収:約40万4千円
- 年収:約581万円(賞与等を除いた額:約484万8千円)
年収で考えると、正社員の薬剤師の方がパート薬剤師よりも約1.6倍高い収入を得ている結果となりました。正社員の薬剤師の場合、賞与その他特別給与額の平均は約96万2千円です。この金額はいわゆるボーナスと考えられますが、ボーナスの金額はパート薬剤師よりも6.8倍ほども高いことがわかります。
一日8時間月20日働いたとすると、「月収÷8時間×20日」で計算した場合の正社員の時給は2,525円となります。月収における時給で比較すると、正社員の薬剤師の方がパート薬剤師よりも約500円高いという計算になりました。ただし実際には、残業手当や諸手当が入りますので正社員の時給はさらに高い水準となるでしょう。
▼ 薬剤師の平均年収の詳細についてはこちらの記事も参考にしてください。
パート・派遣薬剤師の時給の決め方
まず日本では、最低賃金法という法律によって地域や産業ごとに最低賃金が定められています。最低賃金を下回った給与・報酬設定は法律違反となりますので、企業は必ず最低賃金以上の水準を設定しなくてはいけません。
企業は最低賃金を下回らないことに注意しつつ、パート薬剤師の時給について、次のような項目を考慮して決定していきます。
- 派遣先の企業の給与水準や諸手当を参考にする
- 労働者の能力や経験によって金額を調整する
- 資格条件などを設けて金額を決定する
派遣薬剤師の場合は、基本的には「派遣先均等・均衡方式」という賃金決定方式が採られています。この方式では、派遣会社が派遣先の企業の正社員の給与や待遇を事前にヒアリングし、その情報をもとに派遣労働者の賃金が決定されていきます。
例外的に、労使協定方式という賃金決定方式が採られることもあります。この方式では、派遣元と派遣先が一定の要件を定めた労使協定を締結し、派遣労働者の賃金や待遇を決めます。
また、派遣の場合は時給の交渉をするのは派遣会社の担当者です。派遣労働者が直接に派遣先企業と交渉するわけではありません。派遣会社は賃金に関して派遣労働者に説明する義務がありますので、賃金に関する変更などが発生した場合は派遣会社から労働者に対してしっかりと説明がされます。
- 派遣先企業の希望する内容を考慮する(希望するレベルが高い、または緊急の場合などは時給が高くなりやすい)
- 時給に賞与や諸手当を含むかどうかを検討する
- 時給に交通費を含むかどうかを検討する
パート薬剤師が時給アップする方法
パート薬剤師が時給アップを希望する場合、所属する会社が時給を決定しますので、上司との面談などで交渉のチャンスがあります。
人事考課で交渉する
社員と同様に、パートにも契約更新や定期的な面談の機会が設けられています。そうした機会があったとき、評価の対象期間の成果やご自身が職場に対して貢献できたことをアピールしましょう。
採用時に交渉する
採用時に時給について交渉するという方法もあります。特に内定をもらったあとには条件の確認の機会が設けられることが多く、その際に時給アップについて相談することも可能です。
資格手当の支給
職場によっては、社内規則に資格手当が定められていることがあります。社員だけでなくパートも支給対象の場合は、該当する資格を取得していることを報告しましょう。
入社後に該当する資格を取得したときも、報告をすることで資格手当が支給されます。資格は収入アップだけでなく、スキルアップにもつながりますので積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
時給4000円も?高時給の派遣の特徴
派遣薬剤師の場合は時給が4000円を超えるほど高いこともあります。高時給の求人は、次のような条件を満たす場合が多いです。
- 人手不足の職場である
- 緊急に人手が必要になった職場である
- 患者数が多く、忙しい職場である
- 地域の薬剤師の人数が足りていない
- 高いスキルを持った薬剤師を必要としている
高時給の条件で働く場合、忙しい職場であること、高いスキルが求められることが多いでしょう。派遣薬剤師として高い収入を得ることを目指すならば、求人とマッチできるようにスキルアップをしておくと安心です。
派遣薬剤師が時給アップする方法
派遣薬剤師が時給をアップさせるには、次の方法がおすすめです。
契約更新のタイミングで交渉する
同一の職場で働きながら時給アップを目指す場合、契約更新のタイミングが交渉のチャンスです。派遣の場合、1か月ごとなど定期的に契約更新か否かが決まります。このタイミングで時給や仕事内容の見直しがなされます。
注意したいのは、時給アップの交渉をするのは派遣先企業と派遣元企業の担当者ということです。
また時給アップを成功させるためには、普段の仕事ぶりや職場でのコミュニケーションが評価されることを意識しましょう。依頼された仕事をしっかりとこなし、信頼を得ることが時給アップの交渉の前提になります。
派遣先を変更する
派遣先の職場を変えることで時給が上がる場合もあります。派遣薬剤師の時給は、派遣先企業の規模や勤務先、求められる仕事の内容などを考慮して決められます。
スキルの高い薬剤師をすぐにでも確保したい職場や薬剤師が少ない地域では時給が高めに設定されている傾向が見られます。ただし、派遣先が変わったために時給が下がる可能性もあることを理解しましょう。
パート・派遣から正社員に転職するには
派遣薬剤師の時給が高いといっても、雇用が不安定というデメリットはあります。安定した収入を得たい場合には、正社員への転職という方法があります。
正社員に転職することを目指す場合、次のことをしておくと就職活動を有利に進められるでしょう。
勉強会や研修会でスキルアップ
勉強会や研修会に参加することで、薬剤師に求められる知識や業界の情報を得ることができます。また薬剤師として長く活躍していくためには、医薬品に関する最新の情報を習得する必要があります。
たとえば調剤薬局への転職を目指す場合は、調剤業務に関する経験やスキルが必須となることも考えられます。病院薬剤師は、最先端の医療に関する知識を習得していると自己アピールにつながるでしょう。
勉強会や研修会への参加を通してスキルアップするとキャリアプラン形成にも役立ちます。スキルとキャリアプランがしっかりしてくることで、自信を持って就職活動に臨むことも可能になります。
資格取得で能力を証明する
薬剤師としての能力を客観的に証明するならば、資格取得がおすすめです。薬剤師としての能力を証明したい場合、認定薬剤師や管理薬剤師、かかりつけ薬剤師の資格保有者は、能力の証明がしやすくなるでしょう。薬剤師の資格保有者におすすめのダブルライセンスもチェックしておくと、キャリアプランが広がります。
▼ 薬剤師におすすめのダブルライセンスについてはこちらの記事も参考にしてください。
薬剤師の転職に強い転職支援サービスを活用する
転職を考えている場合、複数の転職支援サイトや転職エージェントを活用するのがおすすめです。各サイト・エージェントごとに強みが異なりますので、ご自身の転職活動の進め方やキャリアプランとマッチするサービスを見つけることが大切です。
- 優良求人を発見する確率が上がる
- 求人を比較検討することで情報収集が捗り、満足度の高い転職につながる
- 各サービスごとの非公開求人を閲覧・応募できる
- 自分と相性がいいエージェントのサポートを受けられる
薬剤師の転職の場合は、薬剤師専門の転職支援サイト・転職エージェントを利用するのが安心です。求人を検索する際の絞り込みキーワードや相談会などが薬剤師に特化した内容で作られており、転職成功につながるヒントを得やすくなっています。
▼ 薬剤師向け転職サイトの比較についてはこちらの記事も参考にしてください。
おわりに:パート薬剤師・派遣薬剤師はスキルアップや転職で収入アップがおすすめ
パート薬剤師も派遣薬剤師も、それぞれの働き方にメリット・デメリットがあります。時給アップを目指す場合、資格取得などでスキルアップをしながら職場で活躍することを意識しましょう。正社員への転職で収入アップを考えている人は、薬剤師向けの転職支援サービスを活用するのがおすすめですよ。
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