薬剤師の資格保有者のキャリアチェンジとして、労働衛生コンサルタントという選択肢もあります。労働衛生コンサルタントは難易度が高い国家試験ですが、薬剤師の資格保有者は受験においてメリットを受けられます。この記事では労働衛生コンサルタント試験の合格率や労働衛生コンサルタントの年収相場などを解説します。
労働衛生コンサルタントの仕事とは
労働衛生コンサルタントとは、企業や事業主などと契約を結び、労働環境の衛生面の向上や労働者の健康維持を図る労働衛生のスペシャリストです。労働衛生コンサルタントは国家資格で、厚生労働省が認定しています。
近年は時間外労働や健康被害を引き起こす労働環境、各種ハラスメントなどが問題視されており、企業にとって労働者の衛生管理は優先度の高い項目となっています。健全な企業活動のためにも、衛生管理のスペシャリストである労働衛生コンサルタントによる助言や指導が求められているのです。
労働衛生コンサルタントの仕事内容
労働衛生コンサルタントの仕事は、労働衛生の観点から労働環境や労働者の健康維持を図ることです。労働衛生コンサルタントは、下記のような仕事を行います。
- 事業者の労働環境の点検・診断・評価を行う
- 問題がある場合に改善計画を立案・策定する
- 事業者の労働環境に関して問題が発生したときの再発防止の指導をする
- 労働環境に関する規則や点検基準を設定する
- 労働衛生に関する相談を受ける
- 事業者に対して労働衛生に関する教育を実施する
労働衛生コンサルタントになるには?
労働衛生コンサルタントになるには、労働安全衛生法に基づく国家試験に合格する必要があります。労働衛生コンサルタント試験には、次の2つの試験区分が設けられています。
- 保健衛生
- 労働衛生工学
上記の2つの試験区分のうち、いずれか一つを受験できます。どちらに合格したとしても、労働衛生コンサルタントになった後に担当することができる業務に制限があるわけではありません。
試験には筆記試験と口述試験があり、どちらも合格した場合に労働衛生コンサルタントの資格を取得できます。
労働衛生コンサルタントなら実務経験なしで試験を受験できる
労働衛生コンサルタントはニーズに対して人材不足が課題となっており、その原因のひとつとして考えられるのが、労働衛生コンサルタント試験の受験資格要件です。労働衛生コンサルタント試験を受験するためには、学歴や職歴によっては3年~15年以上の衛生実務経験が必要です。
ただし医師、歯科医師、薬剤師、一級建築士の資格保有者であれば、衛生実務経験がなくとも労働衛生コンサルタント試験を受験できます。
労働衛生コンサルタントなら試験免除を受けられる
薬剤師が労働衛生コンサルタント試験を受験する場合、保健衛生試験に含まれる「労働衛生一般」の科目が免除されます。ただし、薬剤師は保健衛生の区分を選択して受験してください。
試験では筆記と口述の2つの試験があり、筆記と口述どちらの試験にも合格した場合に労働衛生コンサルタントの資格を取得できます。
労働衛生コンサルタントの資格取得に関する詳細はこちら
労働衛生コンサルタントの資格取得法や受験料などについては、下記の記事で詳しくまとめています。ぜひ参考としてチェックしてくださいね。
薬剤師が労働衛生コンサルタントの資格を取得するメリット
薬剤師が労働衛生コンサルタントの資格を取得すると、次のようなメリットを得られます。
難問試験の科目免除を受けられる
国家資格である労働衛生コンサルタントになるには、難易度が高い試験に合格しなくてはいけません。試験の難易度は、合格率は筆記試験が約30%、後述試験が約50%です。薬剤師は科目免除が適用されますので、集中すべき科目を絞ることができます。
就職や転職を有利にする
労働衛生コンサルタントの資格を取得すると、労働衛生関連のコンサルティング会社や事務所への就職や転職が見込めます。薬剤師という職種からするとキャリアチェンジといえるでしょう。
薬剤師の経験や知識を活かして新しい職種にチャレンジしたい人は、労働衛生コンサルタントの資格を取得がおすすめです。
ニーズの高い業界で長く仕事を続けられる
労働環境に関する問題は、企業にとって改善すべき事項です。労働環境に問題がある企業は、労働基準監督署や労働者から指摘されることがあります。問題の程度によっては厳しい罰則が適用されることもあり、事業の継続が危ぶまれる場合も考えられるでしょう。
企業が労働者の安全や健康を守るためにも、事業を安定的に継続するためにも、衛生管理はとても重要です。将来的にも、労働環境改善のニーズは高い水準を保つことが予想されます。企業だけでなく、行政や自治体から業務委託を受けることもあります。このように、労働衛生コンサルタントは幅広い業種や団体から仕事を依頼されますので、安定して長く働くことができるでしょう。
収入アップが期待できる
労働衛生コンサルタントの年収は、600万円~700万円程度が相場です。薬剤師の平均年収よりやや高めの水準ですので、労働衛生コンサルタントへのキャリアチェンジによって収入アップを叶える人もいるでしょう。
労働衛生に関するトラブル防止に貢献できる
労働衛生に関する問題は、人命や心身の健康に関わります。過重労働によって自殺に追い込まれる人や心身に不調をきたす人は少なくありません。こうした事態を引き起こす問題について、改善や再発防止のための指導や助言を行うのが労働衛生コンサルタントです。労働衛生管理を通して社会で働く労働者に貢献することができ、やりがいを感じる仕事といえます。
薬剤師が労働衛生コンサルタントの試験を受験するには
薬剤師であれば免許証の写しがあれば受験が可能となります。科目免除の申請でも免許証の写しは必要です。ただし、添付書類の写しには、「原本と相違ないことを証明する。」という事業者等の証明が必要ですので、書類の準備をするときは忘れないように注意しましょう。
労働衛生コンサルタントの受験資格と添付書類については、こちらも確認してください。
おわりに:薬剤師は難関資格の労働衛生コンサルタント試験にチャレンジしやすい!
労働衛生コンサルタントは試験の難易度が高いだけでなく、受験資格を満たすことも簡単ではありません。薬剤師の有資格者は衛生実務経験がなくても受験でき、試験では科目免除を受けられます。労働衛生コンサルタントは将来的にもニーズが高いことが予想される仕事ですので、薬剤師の資格を活かしたキャリアプランを描いてみてはいかがでしょう。
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