育児中のママ薬剤師は、育児と仕事の両立がしやすい働き方を検討することが多いものですよね。この記事ではママ薬剤師の悩みを解消するための働き方のポイントを解説します。出産後や育児中の働き方を検討しているママ薬剤師は参考にしてください。
ママ薬剤師の悩みと働きやすい職場とは
育児中の薬剤師や出産を控えた薬剤師は、仕事をする上で次のような悩みを抱えることがあります。
- 保育園などの送り迎えのため、遅い時間まで働けない
- 子どもの急病などで休む必要がある
- 育児と仕事の両立で、体力がかなり消費される
ママ薬剤師が働きやすい職場のポイントには、次のようなものがあります。
- 働く時間や日数の希望を出しやすい
- 働く時間帯を調整しやすい
- 勤務地が自宅から近い
- 異動や転勤がない
- 残業がない、または少ない
育児中は時間の融通が利きやすく、安定的に働くことができる職場が理想的ですよね。次章からはママ薬剤師に向けて、正社員・パート・派遣で働くことのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
ママ薬剤師が正社員で働くメリット
パートや派遣との違いとして、正社員は雇用期間の定めがありません。そのため安定した収入を長期的に得られるのがメリットです。また、社会保険や厚生年金保険など、福利厚生面においてもしっかりした処遇を受けることができるのが大きな魅力です。
- 安定した収入を得られる
- 社会保険や福利厚生を受けられる
- キャリアアップが期待できる
- 時短勤務の制度があるとより働きやすい
正社員薬剤師の収入の目安・残業・社会保険など
- 月収:約37万7千円(女性の薬剤師の平均月収)
- 賞与その他特別給与額:約93万4千円
- 年収:約545万8千円(賞与等を除いた額:約452万4千円)
- 残業の有無
- あり
- 社会保険
- 会社または病院の社会保険に加入
- 有給休暇
- あり(ただし会社により有給休暇の制度は異なる場合あり)
- 店舗の異動
- あり(契約によってはなし)
- 契約期間
- 定めなし
上記の年収は、厚生労働省の「令和3年 賃金構造基本統計調査」を基に算出した数字です。
ママ薬剤師がパートで働くメリット
パートとは「パートタイム」の略で、正社員よりも勤務時間が短い労働者を指します。フルタイムでは育児と仕事の両立が難しい場合、パートだと時間に融通が利く分、育児しやすくなることがあります。
- 一日の労働時間や出勤日数、出勤曜日に融通が利きやすい
- フルタイムではないが、長期的にひとつの職場で働ける
- 正社員と比べると、責任あるポジションに就く可能性が低い
パート薬剤師の収入の目安・残業・社会保険・福利厚生など
- 平均時給:2,402円(女性のパート薬剤師の平均時給)
- 1日当たり所定内実労働時間数の平均:5.8時間
- 年間賞与その他特別給与額:約14万3千
円
- 残業の有無
- なし(基本的にはなしだが、職場による)
- 社会保険
- 労働時間など条件によっては会社または病院の社会保険に加入
- 有給休暇
- 条件を満たせば取得可能
- 店舗の異動
- 基本的にはなし
- 契約期間
- 長期雇用の傾向が高い
上記の年収は、厚生労働省の「令和3年 賃金構造基本統計調査」を基に算出した数字です。
ママ薬剤師が派遣で働くメリット
派遣とは、労働者が派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の職場で就業する働き方です。派遣薬剤師の場合、ボーナスや昇給は基本的にありません。ボーナスを含む給与が時給として換算されていることもあります。派遣労働者が雇用契約を結んでいるのはあくまで派遣元である派遣会社です。
また、労働者派遣法により同じ就業先の同じ組織で働ける期間は、最長で3年間と定められています。ただし無期雇用など派遣労働契約によってはこの限りではありません。
- 時給が高く、労働時間が短くとも高収入を目指せる
- スキルの高い薬剤師の場合、高収入を得やすい
- 勤務地や勤務時間について、自分の希望と合う派遣先を探すことができる
- 「紹介予定派遣」の場合、派遣先での将来的な直接雇用の可能性がある
派遣薬剤師の収入の目安・残業・社会保険・福利厚生など
- 給与の目安
- 時給:2000~3000円前後
- 残業の有無
- 選択可能
- 社会保険
- 条件を満たせば派遣会社の社会保険に加入
- 有給休暇
- 条件を満たせば取得可能
- 店舗の異動
- 選択可能
- 契約期間
- 契約更新による
ママ薬剤師が扶養内で働くメリット・デメリット
フルタイムではなくパートや派遣で働くことにした場合、夫の扶養に入るかどうかによって社会保険や所得税控除が異なってきます。
配偶者の年収が一定額以下の場合、配偶者の税金や社会保険(厚生年金と健康保険料)が控除される制度
配偶者の年収が103万円以下の場合、納税者が負担する税金が軽減される制度。控除額は最大で年間38万円。ただし納税者の年収が1,120万円を超える場合、控除額は減額されます。納税者の年収が1,220万円を超えると控除の適用外となります
夫婦のどちらか一方が扶養内で働く場合は、扶養範囲外で働く場合と比較して世帯の手取り金額が多くなることがあります。そのため、扶養内で働くかどうかは世帯収入を考えたときに重要になります。扶養内で働く場合、収入が103万円、130万円(一部の方は106万円)141万円が大きな区切りとなります。
年収103万円の壁
たとえばママ薬剤師の年収が年収103万円以下である場合、ママ薬剤師本人の所得税は課税されません。所得税非課税かつ住民税も比較的安い金額となります。また、夫は配偶者控除(最大38万円)を受けられますので、夫も所得税と住民税が軽減されます。
- 年収103万円を超えた場合、超えた分に対して所得税がかかる
- 年収103万円以下と比較すると、住民税の金額が高い(住民税の金額は居住地による)
年収130万円(一部の方は106万円)の壁
年収130万円以下の場合、夫の社会保険の扶養に入ることができます。年収130万円を超えると夫の扶養から外れることとなり、妻は国民健康保険または勤務先の社会保険に加入する必要があります。
また下記の条件に当てはまる人は、年収106万円を超えたときに勤務先の社会保険に加入する義務が発生します。
- 所定労働時間が週20時間以上である
- 1か月の賃金が8.8万円(年収約106万円)以上である(ただし所定の手当などは賃金から除外可能)
- 勤務期間が1年以上の見込みがある(※)
- 勤務先の従業員が501人以上(厚生年金の被保険者数)の企業である(厚生年金の被保険者数は500人以下の企業であっても所定の条件を満たす場合はこの限りではありません)(※)
- 学生は対象外である(ただし夜間や定時制などの学生は加入対象となることがある)
- 夫の扶養から外れる
- 国民健康保険または勤務先の社会保険に加入する手続きが必要になる
- 社会保険の場合、給料から社会保険料が天引きされるため手取りが減る
- 国民健康保険の場合、社会保険より高いことがある
上記の点に注意する必要がありますが、社会保険が扶養でなくなることはデメリットばかりではありません。国民健康保険や厚生年金に加入することで、病気や怪我で就労不可能になった場合の手当金額が増える可能性があります。また、将来の年金額が増えることもメリットです。
年収150万円の壁
年収150万円以下の場合は配偶者控除が適用されますので、夫の税金負担が軽減されます。年収150万円を超えると段階的に控除額が減額されていきます。ただし夫の年収制限があることも理解しておきましょう。
- 配偶者控除から外れ、税金負担の軽減が小さくなっていく
年収201万円の壁
正確には年収が201万6千円を超えた場合、夫が受けられる控除額が0円になります。また夫の年収が1,220万円を超えると控除対象外となることを理解しておきましょう。
- 配偶者控除が0円になり、税金負担の軽減が受けられなくなる
扶養控除のメリットを最大限得るには年収いくらが丁度いい?
年収103万円~106万円以下の場合は、社会保険や税金負担の面でメリットが得られます。社会保険は自分で加入しても問題ない場合は、年収150万円以下でもメリットを感じられるでしょう。
高時給のパート・薬剤師が扶養に入るには要注意!
ここまで解説してきたように、扶養に入ることで社会保険や税金の面でメリットが得られます。ただしパートや派遣で働く薬剤師の場合は高時給で働くケースもあり、労働時間が短いとしても年収が扶養内の条件として定められている制限を超えてしまうことがあり得ます。
特に年収130~150万円の年収の場合、結果的に世帯の手取り金額が少なくなる可能性があります。パートや派遣で働くことを希望するときは、時給だけではなく年収がどれくらいになるか計算しておくと安心です。
また、夫の年収によっても受けられる控除の金額が変わります。世帯年収に関わることですので、夫婦で一緒に控除についての理解を深めましょう。
出産後のブランクが心配なママ薬剤師ができること
出産後の職場復帰に不安を抱えているママ薬剤師もいるのではないでしょうか? 出産後は、ママ自身の体調や心の状態が産前とは変わっていることが少なくありません。育児が始まると赤ちゃんのお世話が生活の中心になり、今までとライフスタイルがガラっと変わることがほとんどです。
職場復帰をしようとしたとき、ママ薬剤師は次のような悩みを抱えることもあります。
- 育児の時間が確保できるか不安
- 自分の体力や気力に余裕があるか不安
- 就職先が見つかるか不安
- 薬剤師としての知識が最新でないことが不安
特にフルタイムの正社員として職場復帰した場合、育児の時間が確保できるか不安に感じることも多いでしょう。時短勤務やフレックスタイム制度など、職場に勤務時間に関する制度が設けられているかどうか確認するのが安心です。
育児は体力と気力も必要ですので、フルタイムでの職場復帰に不安がある場合は、パートや派遣で職場復帰するのもおすすめです。ただし派遣薬剤師は派遣会社が就労をサポートしてくれたり、時給が比較的高めなのが魅力ですが、同じ就労先で働くことができるのは最長3年です。
転職活動においてブランクが採用に影響するのではないかと不安なママ薬剤師は、求人数が多いドラッグストアでの職場復帰を目指すという方法があります。研修が充実した職場へ就職することで、最新の情報や知識を吸収し、スキルアップするチャンスも得られるでしょう。
メディカルライターはママ薬剤師におすすめの在宅ワーク
ママ薬剤師が、正社員・パート・派遣で働く場合の考え方を解説してきましたが、薬剤師以外の職業で収入を得るということもできます。医療系の記事を執筆するメディカルライターは、薬剤師の知識や経験を活かしながら在宅ワークができる仕事です。
メディカルライターとは
医学や薬学に関する記事を執筆するライター。医師や看護師、薬剤師がメディカルライターとして活躍するケースは多いです。一般向けのメディアや製薬会社向けメディアなど活躍の幅が広く、専門知識メディカルライターの需要は高めです。近年は医療系記事の信頼性確保やクオリティの維持がとても重視されていますので、医師や薬剤師など高い専門知識を持った人が医療系記事を執筆・監修することが増えています。メディカルライターの仕事を通して、最新の医療情報に触れる機会も得られるでしょう。
製薬会社向けメディアの仕事
製薬会社向けメディアのライターは、英語力も兼ね揃えた薬剤師の場合、論文の翻訳業務を担当することもできるため、さらに重宝されやすいです。
- 製薬会社のHP記事作成
- パンフレットの文章作成
- 治験計画書の作成
- 臨床試験の統括報告書作成
- リスクマネジメントプラン(RMP)の作成
- 論文の翻訳業務 など
一般メディア向けのメディカルライター
一般メディア向けのメディカルライターの仕事には、次のような種類があります。メディカルライターは在宅ワークで仕事を進めることができるため、育児との両立がしやすいことが大きなメリットです。関心がある人はメディカルライターの仕事を探してみてはいかがでしょう。
- 医療系ニュース記事の作成
- 調剤など医薬品に関する専門性の高い記事の作成
- 薬剤師の仕事を紹介する記事の作成 など
おわりに:働きやすい職場を見つけて育児と仕事のバランスを取ろう
ママ薬剤師が働きやすい職場を見つけるためのポイントを解説しました。家族構成やお住まいの地域、夫の収入によっても働きやすさの基準は異なりますので、ママ薬剤師本人と家族にとって理想的な職場が何かを考えることがまず大切です。より働きやすい職場を見つけるために転職を検討するときは、薬剤師転職サイトや転職エージェントを活用すると安心ですよ。
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