高時給でライフスタイルに合わせて働きやすいことから、派遣薬剤師という働き方に魅力を感じる人もいますよね。この記事では派遣薬剤師のメリット・デメリット、職場ごとの働き方の違い、派遣薬剤師に向いている人などについて解説します。
派遣薬剤師とは
派遣薬剤師とは、派遣という雇用形態で働く薬剤師を指します。派遣では、派遣会社に登録し、派遣事業所(派遣元)を通して企業(派遣先)で働きます。
- 派遣会社に登録する
- 派遣会社の担当者と打ち合わせし、薬剤師の希望条件やスキルなどを共有する
- 派遣会社の担当者が、薬剤師におすすめの求人情報を紹介する
- 給与や待遇面などについて確認したいことがある場合、派遣会社の担当者が派遣先と調整する
- 派遣先での就業開始
派遣薬剤師の働き方は、正社員や契約社員、パートの雇用形態とは異なる部分があります。派遣薬剤師の働き方について解説していきますので、一緒に派遣薬剤師について理解を深めましょう。
派遣薬剤師の雇用主は派遣元?派遣先?
正社員やパートとして雇用されている場合、雇用主は勤務先の企業であることが一般的です。派遣薬剤師の雇用主は、登録している派遣会社です。派遣先の会社は雇用主ではありません。業務に関する直接的な指示や管理を行うのは、派遣先の企業です。
同じ派遣先で働くことができるのは最長3年
派遣で働く場合は、労働者派遣法によって派遣可能期間に制限が設けられています。同一の事業所に派遣され働くことができるのは、最長で原則3年までです(2022年7月現在)。
派遣として働いて3年が経過すると、派遣先から正社員として雇用される場合と契約終了となる場合のどちらかになります。契約終了となった場合は、派遣会社から別の派遣先を提案してもらうことも可能です。
派遣薬剤師が働く派遣先
派遣薬剤師が働くことができる職場は限られています。これは労働者派遣法の規定により、病院や診療所など、医療関係業務に対する薬剤師の派遣は禁止されているからです。この規定のため、派遣薬剤師は調剤薬局またはドラッグストアに派遣されることがほとんどです。
ただし特定の条件を満たす場合は、派遣薬剤師が病院などで医療関係業務に従事することができます。派遣薬剤師が病院で働くことができるのは、下記のいずれかを満たす場合です。
- 紹介予定派遣である
- 産前産後休業・育児休業・介護休業中等による代替である
派遣薬剤師の時給はどのくらい?
薬剤師の年収は、都市部よりも地方の方が高い傾向があります。これは派遣薬剤師も同様の傾向が見られます。勤務地や企業規模などにもよりますが、派遣薬剤師の時給は2,000円~3,000円前後が相場です。
派遣薬剤師はサービス残業はなく、残業する場合は基本的に残業代がしっかりと支給されます。労働時間をコントロールしつつ高い水準の年収を維持することができる点は、派遣薬剤師の大きなメリットのひとつでしょう。
派遣薬剤師は福利厚生や産休・育休を利用できる?
派遣として働くことを検討したとき、福利厚生や休暇制度を利用できるかどうかは気になるところですよね。派遣の場合でも、福利厚生や産休制度、育休制度を利用することができます。
派遣薬剤師の有給休暇取得
派遣として働く場合も有給休暇を取得可能です。ただし有給休暇は労働時間によって付与されるかどうかが変わってきますので、契約の内容によっては有給が付与されないこともあるでしょう。
派遣社員を雇用しているのは派遣元の派遣会社です。そのため、有給を付与するのも派遣元からとなります。福利厚生も有給休暇と同じように派遣元の制度を利用できます。つまり職場は同じであっても、企業に雇用されている正社員と派遣社員とでは利用できる福利厚生や有給休暇が異なるというわけです。
派遣薬剤師は産休・育休を取得できるか
派遣として働く場合も産休と育休を取得可能です。産休と育休は法律によって労働者が請求できることが定められています。休暇制度を利用したい人は、派遣元である派遣会社に産休・育休について前もって相談しましょう。
ただし派遣の場合、産休明け・育休明けに元の派遣先に戻ることができるかは状況によります。産休・育休を取得するときは、派遣会社に復帰後の働き方について相談するのが安心です。
派遣薬剤師のメリット
派遣薬剤師として働くことには、次のようなメリットがあります。
労働時間をライフスタイルに合わせやすい
正社員と比べると、派遣薬剤師の方が勤務時間や曜日、働く期間を選びやすいという点が大きなメリットです。フルタイムで働くのが難しい人や週に数日程のペースで働きたい人には派遣という働き方が合う可能性が高いでしょう。
労働時間は基本的に労働契約の範囲内とされますので、残業をすることもあまりありません。特に「残業をしない」という条件で派遣された場合は残業はすることがありません。残業が発生した場合、派遣会社に残業の報告をします。
時給が高い
パートやアルバイトと比べると、派遣薬剤師の時給は高めに設定されていることが多いです。派遣薬剤師には即戦力としての働きが期待されており、雇用条件に応じて高めの時給が設定されているからです。ただし高い時給で働くということは、薬剤師としての高い能力やスキルが求められるということを理解しておきましょう。
派遣元の担当者がサポートしてくれる
派遣会社の担当者のサポートを受けられることも、派遣として働くメリットです。登録後の職場探しはもちろんですが、派遣先での就業開始後に疑問や不満、交渉したいことが発生した場合、派遣会社の担当者に相談することができます。派遣先の企業に言いにくいことであっても、まずは派遣会社の担当者に気軽に相談できますので、仕事をしていく上での頼もしい存在といえます。
派遣先ごとに学びがあり、スキルアップにつながる
派遣の場合は同一の事業所では最長3年までしか働けません。派遣薬剤師として働き続ける場合、就業先の変更はどうしても発生します。同じ職場で働き続けたい人にとってはデメリットですが、さまざまな職場を経験したい人からするとメリットになるでしょう。
たとえば調剤薬局またはドラッグストアは、店舗の立地によって処方せんの内容や患者さんの層が異なりますので、磨くことができるスキルも広がります。企業や職場ごとのノウハウも異なりますので、さまざまな職場を経験しながら効率的な働き方を学ぶこともできるでしょう。
派遣薬剤師のデメリット
メリットもある派遣薬剤師ですが、派遣という性質がデメリットにつながることも考えられます。
同一の事業所での雇用期間に定めがある
同一の事業所で派遣薬剤師が働くことができるのは、最長3年までです。3年は最長の期間ですので、契約期間がもっと短い場合もあります。派遣先が働きやすい職場であっても、3年を超えてからは派遣として働き続けることはできません。
ただし紹介予定派遣の場合は、派遣期間終了後に直雇用される可能性があります。長期雇用は難しいという点は、正社員やパートと比較するとデメリットといえます。
希望通りの勤務条件・勤務地で働けるとは限らない
希望に合う働く時間や曜日を選びやすいのが派遣薬剤師のメリットですが、希望通りの派遣先が見つかるとは限りません。
希望に近い派遣先で働くことができたとしても、同一の事業所で働くことができるのは最長3年です。派遣先が変わるごとに派遣先のルールやマニュアルを覚えたり、円滑な人間関係を築く必要もあります。短期間で職場に適応でき、患者さんにもスムーズに対応できる人材が求められていますので、即戦力の派遣薬剤師が必要とされているというわけです。
仕事量が多く、忙しい
派遣薬剤師を募集している職場は、人手不足であることが多いです。派遣薬剤師は徐々に仕事に慣れるというよりは、即戦力としての働きが期待されます。残業も基本的にはありませんので、時間内に業務を処理していく能力が必要です。
仕事内容の幅が狭くなることがある
薬剤師の業務はさまざまですが、派遣薬剤師は患者さんとの長期的なサポートをする業務を行うことが難しくなります。特に派遣期間が短い場合は、かかりつけ薬剤師業務や在宅医療業務を担当することは難しいでしょう。
派遣薬剤師が担当しやすい業務は、調剤業務などが中心になります。患者さんをもっと深くサポートしたい場合、派遣薬剤師だと希望する業務の担当ができないかもしれません。
雇用が不安定になりやすい
派遣薬剤師はライフスタイルに合った働き方を選びやすいのがメリットですが、希望の条件と求人内容がマッチしない場合は派遣先がなかなか決まりません。次の派遣先が見つからずに収入がゼロになるおそれがあります。
人手不足のために派遣薬剤師を雇用している企業の場合、正社員やパートの薬剤師を確保できたタイミングで派遣薬剤師の契約更新を止めるということも考えられます。
職場ごとの派遣薬剤師の働き方
派遣薬剤師という働き方にはメリットとデメリットがあります。さらに職場によっても派遣薬剤師の働き方が異なります。調剤薬局、ドラッグストア、病院ごとの派遣薬剤師の働き方の例を解説しますので参考にしてください。
調剤薬局の派遣薬剤師の働き方
調剤薬局で派遣薬剤師が働く場合、効率の良さとスピード感が求められることが多いでしょう。派遣薬剤師は調剤業務を担当する傾向も多く見られます。
派遣薬剤師として調剤薬局での勤務を希望する場合、調剤経験が豊富である方が求人とマッチしやすいでしょう。
ドラッグストアの派遣薬剤師の働き方
派遣薬剤師がドラッグストアで働く場合、能力やスキルを考慮すると調剤薬局併設型の調剤室で働くことが多くなるでしょう。
ドラッグストアで働く派遣薬剤師の仕事は、調剤業務とOTCの接客販売などが中心となります。ただしドラッグストアでは日用品や食品も扱っていますので、レジ打ちや品出しなどの業務も仕事に含まれることも考えられます。
ドラッグストアは店舗数が多く、24時間営業や深夜営業をしている店舗があります。希望する時間帯に働くことができる店舗があれば、働きやすい環境を得られるでしょう。
病院の派遣薬剤師の働き方
病院内へ薬剤師を派遣することは、労働派遣法第4条によって制限されています。ただし前述したように、紹介予定派遣または産前産後休業・育児休業・介護休業等による代替の場合は、派遣薬剤師が病院で働くことが可能です。
病院の勤務時間は一般的には8時半〜9時に始業し、17時に退勤ということが多いです。正職員は夜勤や当直を担当しますが、派遣社員にはありません。
病院への派遣は数が少ないため、派遣薬剤師にとって競争率の高い職場といえます。病院への派遣を希望する場合は、派遣会社の担当者にしっかりと希望を伝えておきましょう。
派遣薬剤師に向いている人の特徴
派遣薬剤師という働き方には特徴がありますので、ご自身が派遣薬剤師に向いているか検討してから派遣会社に登録するのもおすすめです。
- 育児のための時間を確保したい人
- 介護のための時間を確保したい人
- プライベートの時間を確保したい人
- 高時給で効率よく収入を得たい人
- 環境を変えたい、さまざまな職場で働きたい人
- コミュニケーション能力が高く、新しい職場に適応できる人
- 職場ごとのルールを受け入れる柔軟性がある人
- ひとつの職場でのキャリアアップにはあまり関心がない人
育児中は派遣薬剤師として働くか、長期的に派遣薬剤師として働くかは人それぞれです。育児が落ち着いてから正社員採用を目指すというキャリアプランもあります。また、高時給の派遣薬剤師として働き、独立資金を作るというキャリアプランもあるでしょう。
おわりに:派遣薬剤師はライフスタイルやキャリアプラン次第でメリットが大きい!
正社員やパートとして働くことにメリットとデメリットがあるように、派遣薬剤師の働き方も合う人と合わない人がいるでしょう。ご自身のライフスタイルや将来的にどのようなキャリアを積みたいかを考えながら、派遣薬剤師という働き方を検討してみてくださいね。
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